TFCC損傷って何?

聞きなれない名前ですよね。

日本語だと三角線維軟骨複合体損傷 といいます。英語にするとtriangular fibro cartilage complex:TFCCですね。

TFCC:三角線維軟骨複合体とは手関節尺側(小指側)に存在する靭帯、線維軟骨複合体のこと

1981 palmer 出典元:The triangular fibrocartilage complex of the wrist—anatomy and function

「なんで急に手首?TFCCとか急に出てきたな~」とお思いのあなた、鋭いですね~

そうです。自分がやっちゃいました。長テーブルを積み上げる時にグッと片手で持ち上げながら押し込むとズキッ!と鋭い痛みを感じました。やった瞬間に捻挫ではないと確信しました。自分手を使う仕事ですから結構ショックでした。通常の治癒過程では組織損傷なので治療も完治するには3週間くらいかかります。

 

いつもは患者さんに行なっていることを、自分で試す良い機会となりました。お困りの方の多い疾患なので経過と治療・日常生活での注意点などを報告しますね。

先ずはTFCCの受傷機転です。

背屈強制(過剰に手の甲側に反らされる)・回外、又は回内強制(強制的に手首を捻られる)・軸圧(手を強くついてしまう)の組み合わせによって損傷する    1981 palmer 

出典元:The triangular fibrocartilage complex of the wrist—anatomy and function

受傷の仕方によって痛みの出る運動方向が変わるので、どのようにして損傷したのかはとっても大切な情報です。

TFCCの症状です。

手首を動かす動作で主に症状が出ます。ハンドル操作、手をつく動作、物を持つ動作、手首を反らしたり、捻る動作で痛みが出るのが主な症状です。日常生活では手を使うことが多く、生活がかなり制限されてしまいます。スポーツ選手も悩んでいる方が多いですね。

よくある間違いとしてスポーツで手首を柔らかく使いたくて下の画像のようになってしまっている選手は多いですね。バット・ラケット・ゴルフクラブ全てにおいていえますが、手でしっかりとコンタクトして緩みのない様にしっかりと、優しく握ります。グラグラしてるのは論外ですよ。

平成の3冠王!元softbankの松中信彦や、400本塁打に2000本安打の侍ジャパンの元監督・小久保裕紀は手術までしました。プロゴルファーでは2008年賞金女王の古閑美保も長いこと悩まされましたし、テニス界ではラファエル・ナダルは左手首TFCC損傷の怪我で2016ウィンブルドンを欠場してます。一流と呼ばれる選手もやってしまうんですね。

 

 

次にTFCCの症状や痛みの部分を見極める「疼痛誘発テスト」をやってみましょう!

先ずは手首を小指側に曲げ、上から押して損傷部位を圧迫するストレステストです。

①尺骨軸圧テスト

少し痛いですがまだ大丈夫な感じの動きですね。受傷機転で損傷部位が違いますので、あなたの手首の痛みはどの肢位で痛いのかが大切です。次はもう少し強いテストやってみましょう!

②尺骨回外軸圧テスト

尺屈回外テストです。手の平を自分の顔に向けるように最後まで捻ってから小指側に曲げて軸圧をかけます。これはけっこう痛い人が多いと思います。次は反対の捻りのテストです。

③尺骨回内軸圧テスト

尺屈回内テストです。手の甲を自分の顔に向けるように最後まで捻ってから小指側に曲げて軸圧をかけます。先程の捻りと反対側ですね。私の症状はこのテストが一番痛かったです。あなたはどちらの捻りで痛みが強いですか?この違いがとても大切です。後ほどテーピングをお伝えします。このテスト結果は大切なので痛みの少ない運動方向を覚えておいて下さいね。

つぎはピアノキーテストです。小指側の手首の骨を押し下げると痛みが減る人が多いです。このテストも重要です。

④ピアノキーテスト

矢印部分をガバッと握って圧迫した状態で動かすと痛みが減る。又は消失する人も多いですね。矢印の手首の骨(尺骨)が下から突き上げる様に偏位しているケースも多いです。このTypeの人は矢印部分を押し下げながら圧迫すると楽になることが多いですね。

では具体的に治療にはいりましょう!

手首のクッション作用を持つ三角線維軟骨複合体の組織損傷に原因があるので先ずは組織の修復が優先です。痛みのある動作を繰り返して「まだ痛いな~」「これもまだ痛いね~」ってやっているあなた!やめましょう!ストレスのかかる動きをしないのが、とても大切です。

 

受傷から3週間以内の人は先ずは固定です。痛い動きをしないで組織の修復を優先しましょう。一番いいのは固定の装具ですが、手首が全然動かせません。自分も装着してみましたが全然仕事になりません(笑)

手首が使えないと困るという方にオススメなのはテーピングです。伸びないTypeの非伸縮テープ、ホワイトテープと呼ばれる種類で手首に痛みの出ない設定にすることが可能です。

先ずはピアノキーテストで痛みが減った人に有効なテーピングです!

A 尺骨押し下げテーピング

手首の甲側中央から巻いていきます。先程のピアノキーサインの尺骨の出っ張りの部分を引っ掛けて下に引き下げるように巻いていきます。角度は約45°でテンションを保ったまま引っ張りながら巻いていきます。けっこう強く引っ張ったまま巻いて下さいね。上手く巻けたら上からもう一枚巻きます。2重にするのもポイントです。テーピングが馴染むまで20分位かかります。どうでしょう?これだけでも楽になりますね。

 

私の症状はこのテーピングだけで痛みなく動かせるようになりました!PTAのミニバレーボール大会も問題なく出れて痛みなく出来ましたよ!

 

 

次はもう少し固定性をアップさせたテーピングです。先程の②③のテストで痛みが少ない運動方向に誘導すると痛みなく動かせるようになっていきます。

巻き方は全く同じですが、巻く肢位が違います!テーピングは痛くないポジションで巻くのが基本です。また、巻く本数、強さでかなり変化しますので色々試して見て下さい。

私は③のテストが一番痛かったので手のひらを 顔の方に向けて(回外位)巻くBテーピングがとても効果的でした。

反対に②のテストで一番痛い人は手の甲を顔の方に向けて(回内位)巻くCテーピングが効果的と思われます。

もちろんA/BやA/Cを一緒に巻いてしまっても大丈夫です。私もいつも治療の場面では尺骨押し下げと回内・回外誘導テーピングを併用することがとても多いです。併用して巻くと固定性が強まるので受傷直後や痛みの強いケースには有効です。組織損傷であり修復に時間がかかること、クッション作用を持つ繊細な組織であるために治療期間として6週間テーピングや固定を続けて頂く様にご案内しています。(わたしも4週くらいかかりました。)



テーピングが面倒な方は負担の減らす手首専用サポーターも有効ですよ。
受傷から3ヶ月以上経過しても良くならないケースは手術的治療を検討することもあります。三角線維軟骨複合体はハンモック状でクッションの役割を持つ繊細な組織です。負担を沢山かけるととても危険です。長期化・慢性化すると日常生活の活動が著しく制限されてしまいます。動かさないのも良くないのですが運動は優しくマイルドに行い、過負荷をかけないことがとても大切です。

 

あなたの手首の痛みがなくなること、日常生活を健やかに過ごして頂ける様に応援します。

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